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圦本尚義教授が最終講義 “We are always on the frontier.”

3月6日(月)、創成研究機構/理学研究院 圦本尚義教授の最終講義が行われました。宇宙化学が専門の圦本教授は、国際的な著名誌であるサイエンスとネイチャーに論文が計16回掲載されるなど、華々しい業績を残しています。2020年には、学術・スポーツ・芸術において優れた実績を挙げた人に贈られる紫綬褒章を受章しました。これまで、約46億年前の太陽系の起源に迫るべく、当時の物質がとけずに残る小惑星に着目した研究を進めてきました。小惑星のかけらである隕石を分析するために独自開発した「同位体顕微鏡」は、様々な分野の研究に役立てられています。

講義をする創成研究機構/理学研究院 圦本尚義教授

圦本教授は2005年に本学に着任しました。その際、当時勤めていた東京工業大学から、総重量10トンもの同位体顕微鏡を分解して持ち込みました。同位体顕微鏡は、物質がつくられた年代や温度、圧力などを調べることができる画期的な装置です。本学では圦本教授らの研究にとどまらず、共用機器として学内外の多くの研究者が利用しています。「北大では、理学と工学をはじめ、農学、歯学、薬学、医学、獣医学、水産学の全理系学部に使っていただくことができました。同位体顕微鏡を通して、いろいろな分野の先生とお話しすることができて嬉しかったです」と笑顔を見せます。

20年の歳月をかけて開発した同位体顕微鏡(2015年撮影)

同位体顕微鏡を用いた研究成果はこちらの記事で紹介しています
理学研究院 圦本尚義教授が紫綬褒章を受章(後編:研究紹介「顕微鏡で宇宙をみる」)(2020年5月1日)

圦本教授は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が進める小惑星探査機はやぶさ、はやぶさ2のプロジェクトにも大きく貢献しました。2011年、小惑星イトカワの酸酸素同位体分析に世界で初めて成功し、隕石が小惑星のかけらであることを証明しました。2016年から2020年は、JAXA教授を兼任。はやぶさ2が持ち帰った小惑星リュウグウのサンプルを壊さず、汚染せずに受け入れるキュレーションセンターや、各国の研究者に分配するためにサンプルを選り分ける装置の製作に携わりました。2023年には、リュウグウのサンプルに太陽系初期の物質がふんだんに残されていることを明らかにし、太陽系の歴史を探る貴重な手がかりであると発表しました。

はやぶさ2プロジェクトでの研究成果はこちらの記事でも紹介しています
リュウグウのかけら 太陽系初期の記憶を残す、地球史上もっとも“新鮮”な手がかり(2022年6月17日)

JAXAの担当者からはやぶさ2が採取したリュウグウのサンプルを受け取る圦本教授(2021年6月撮影 ©JAXA)

最終講義では、筑波大学に入学した1976年から現在に至るまでに関わった恩師や共同研究者、大学関係者など、およそ50名を一人ひとり紹介し、「このような素晴らしい出会いがあり、自由気ままに研究者人生を送ってきました。僕にとっては自由気ままにするというのが何より重要で、それはきっと研究室のキャッチフレーズでもある“We are always on the frontier”の通り、常にフロンティアに立つことなのだと思います。しがらみのないのびのびとした最前線の環境に身を置き、研究を続けてきたことが、今の僕に繋がっているのだと思います」と語りました。

最終講義の後に行われた祝賀会での集合写真(撮影:武蔵高等学校中学校 教諭 巻出健太郎(圦本研究室OB))

(創成研究機構 研究広報担当 菊池優)

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