食品の機能とおいしさを定義する:力学を基にした新たな評価法確立
工学研究院 准教授 田坂 裕司

研究の背景と目的

「いつまでも美味しい食事を安全に楽しみたい」それは多くの人々の願いです。我が国には「しっとり」「もちもち」など外語に翻訳できない食感(Texture)に関する表現が多く、古くから「食」の楽しみとして「食感」が重視されてきました。しかしそれらは非常に感覚的かつ経験的に評価されており、定量化されている栄養学的機能性と異なり、「食べやすさ」や食感由来の「おいしさ」の評価は科学的地位を築けていません。

一般的に用いられている官能評価試験では、味覚や個人の嗜好に影響を受け、「食べやすさ」の情報を正確に抽出できないとされてきました。一方で、従来の機器分析による粘度や堅さなどの物性評価試験は、非常に理想化された系であるため実現象との乖離が見られ、また非均質・混相状態の食品を正しく評価できません。本研究では、機械工学における流体力学と材料力学の方法論を応用し、従来の官能評価試験と臨床試験、物性評価試験とを有意にリンクさせる、第三の力学的評価試験を確立することを目的とします。

 

研究内容

食塊の流動抵抗はその変形速度に依存します。我々が開発してきた超音波流速分布計測を用いた力学的評価手法では、低せん断での粘度と粘度の歪み速度依存性を表すKnマップ*としてこれを評価できます。この評価方法を、実際に病院で提供されている食品に適用することで、患者の状態と提供する食品などの臨床現場での知見を定量的情報と結びつけます。さらに、粘着剤の「べたつき」を測るタック試験など、材料力学の手法を導入することで、食塊の離脱特性を評価に加えます。咽頭モデルで流動する食塊内外部の情報を超音波と動画像により入手し、食塊が咽頭部から綺麗に剥がれるための速度、そのときのはく離加重を、嚥下食としての定量性やのど越しと関連付けます。医農工の連携により、上記手法と従来の評価手法を融合させ、定性的基準に変わる次世代の「食べやすさ」「おいしさ」評価基準を策定します。

*Ohie et al. J. Texture Studies (2022)

 

研究メンバー構成

関連リンク

研究室ウェブサイト