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北海道大学とアルム株式会社が機械加工AIソフト無償貸与契約を締結

本学とアルム株式会社は、同社開発の人工知能(AI)搭載機械加工プログラム自動生成ソフトウェア「アルムコード1」の無償貸与契約を6月1日付けで締結しました。当日は、締結式と報道関係者向け説明会が開かれました。

左から電子科学研究所 技術部 武井将志 技術専門職員、アルム株式会社 代表取締役 平山京幸 CEO、増田隆夫 理事・副学長、電子科学研究所 技術部 楠崎真央 技術専門職員。電子科学研究所 機械工作室の工作機械の前にて

大学の研究教育の場においては特殊な実験や観測などを行うため、市販の機器では対応できないことも少なくありません。そのため本学では、理学研究院、工学研究院、低温科学研究所、電子科学研究所、触媒科学研究所の計5か所の専門部署で、熟練の技術支援スタッフが研究者の要望に合わせて必要な機器をオーダーメイドで制作しています。

電子科学研究所の機械工作室(写真提供:電子科学研究所 機械工作室)
最近では、小惑星探査機はやぶさ2が持ち帰った試料を、地球上の大気などに晒さずに密封して運ぶ容器の制作なども行った(写真提供:電子科学研究所 機械工作室)

金属やプラスチックなどを複雑な形状に加工する際は、工作機械を用いるのが一般的です。図面をもとにどのように加工するかを計画し、作業手順を練ったり工具を選んだりして、それらすべてを人の手でプログラムに書き起こします。工作機械をそのプログラム通りに動かすことで加工物をつくり出しているのです。アルムコード1は、そうしたプログラムを組む工程を、独自開発のデータベースと人工知能を用いて自動化するものです。「アルムコード1の導入により作業効率が改善され、技術支援スタッフの負担を軽減することができます。結果として、研究活動のDX化が推進されるとともに、学外からの加工依頼の受入れ増加にもつながると期待しています」と、増田 隆夫 理事・副学長。アルム株式会社 代表取締役 平山 京幸 CEOは、「北海道大学でソフトを活用していただくことで見える現場のニーズを、今後の製品開発に活かしていきたいです。また、研究者の方々とも連携し学術的な協力を得ることで、新技術の開発や社会実装など更なる共同研究につなげたいと考えています」と語りました。

締結式で感謝状と無償貸与書を取り交わした増田隆夫 理事・副学長と平山京幸CEO(撮影:広報課 学術国際広報担当)

締結式の後は、電子科学研究所 機械工作室にて、切削加工のデモ実演が行われました。まず、アルム株式会社 ソフト開発グループ 村上 聡 ゼネラルマネージャーが図面データをアルムコード1に解析させると、プログラムが自動で生成されました。所要時間は1分半ほど。人の手では90分ほどかかるプログラム作成作業も、わずか2~3分で完了すると村上ゼネラルマネージャーは言います。次に、電子科学研究所 技術部 武井 将志 技術専門職員、楠崎 真央 技術専門職員が、そのプログラムを工作機械に読み込ませ、実際に加工が行われる様子を紹介しました。

アルムコード1が作成したプログラムにより、工作機械が作動している様子。中央の青い樹脂製の素材を、上部に取り付けられた工具で削っていく。黄色の液体は、摩擦防止や冷却のための切削油

武井技術専門職員は、「こういった機械加工は、学内だけでも年間1,000件以上の依頼があります。そのほとんどが一点物という少量多品種での生産なので、どのように加工するかを考えてプログラムを書き起こすのにかなりの時間を費やしてきました。アルムコード1を利用することで、相当量の時間を効率化できるのではと期待しています。これから実際に現場で使ってみるのが楽しみです」と話していました。

記者からの質問に答える武井技術専門職員

(創成研究機構 研究広報担当 菊池 優)

 

本件は、北海道新聞、日本経済新聞でも紹介されました。

自動化機械設計の金沢企業、北大にソフトウエア提供(日本経済新聞電子版)

AIソフト貸与、北大と契約締結 金沢のアルム(北海道新聞電子版)

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