フィールド科学の明日を切り開く先端応用予測研究
 
理学研究院 教授 見延 庄士郎

(撮影:PRAG 中村 健太)

研究の背景と目的

ギリシャのデルファイの神殿、中国殷王朝や古代日本の⻲ト(きぼく)骨ト(ぼっこつ)は、古代より人間社会が予測を渇望していたことを示しています。気象学・気候学は予測の原理と技術を追求し、これらの学問分野が提供する予測は、日常生活、企業活動、さらにはパリ合意に代表される国際政策協調など、幅広い影響を社会に与えています。予測に対する需要の増加、コンピュータの発達、そして最近爆発的に研究が進展している機械学習と数値計算モデルとの統合利用は、さらに予測の研究とその応用を増大させています。

一方で予測研究の発展は、大きな二つの困難をも研究コミュニティーにもたらしています。第一は、予測データの巨大化が、世界をリードするような研究実行の負担を大きくし、特に大学における個々の研究室での遂行を困難にしていることです。気象学・気候学の予測は、対象とする時間空間スケールに対応した数値モデルによるものであり、今日は 1 予測システムで数十の予測を行う多数試行を、さらに複数のモデルで行って予測を評価する複数モデル・多数試行が世界レベルの先端研究では一般的になっており、その解析には巨大なデータのダウンロードと下処理のために、計算機資源とマンパワーを必要とするのです。第二は、新たな応用を可能とするために、従来の枠を超えた分野間連携および産学連携が必要なことです。予測の出口となり得る分野は、農水産業、損害保険などの金融業、陸海空運の輸送業、自然エネルギー産業など多岐に渡り、それぞれの研究に応じて参加者が win-win の関係を得られる協業のデザインが必要です。また特に発展が著しい機械学習については、機械学習研究者と気象・気候さらに応用分野の研究者の間の有機的な連携が、高い競争力を持つ研究を実現するには重要でしょう。

このような背景を踏まえ、本構想では創成特定研究として、「フィールド科学の明日を切り開く先端・応用予測研究」を提案します。本構想の目的は、1)気象・気候分野の予測に関係する世界レベルの基礎研究を行うことと、2)さらに他分野を含めて予測に関係する分野融合研究、産学連携、社会貢献を行うことです。

研究内容

上記の目的を達成するために、本研究では以下の3つの研究内容を実行します。

  • 国内外の数値予測モデル計算結果のビッグデータ解析
  • グローバル数値計算モデルの出力を用いて、領域数値計算モデルを実行して時間・空間に解像度の高い情報を得る高精細推定
  • 数値モデルの出力解析と機械学習を併用し、数値計算では得られない量を推定する拡張予測

さらにこれらの実現のために、気象・気候ビッグデータと予測システムの基盤整備を行います。気象・気候ビッグデータとしては、現業的に予測が行われている1年程度先までの季節内から季節予報、実験的に実施されている 10 年程度までの複数年予測、そして地球温暖化による数十年から数百年先の予測などがあります。これらの予測データのうち研究の進展に合わせて適切なものを、国内の、そしてそれよりもはるかに多い海外の気象・気候予測センターより収集します。

 

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研究チーム構成

  • 理学研究院 教授 見延 庄士郎(代表)
  • 理学研究院 教授 稲津 將
  • 理学研究院 准教授 佐々木 克徳
  • 農学研究院 准教授 加藤 知道
  • 水産科学研究院 准教授 上野 洋路
  • 情報科学研究院 准教授 小山 聡

実績報告

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