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サイエンスレクチャー2022「え?身近な原生生物がこんなにも〇〇!?」を開催しました<前編>

6月18日(土)、北海道旭川北高等学校にて「サイエンスレクチャー2022『え?身近な原生生物がこんなにも○〇!?』」が開催され、旭川市の高校生34名が参加しました。原生生物とは、アメーバやミドリムシといった単細胞生物や、ボルボックスなどの単純な構造の多細胞生物のこと。脳も神経もないのに、効率的にエサを採ったり、障害物を避けるように移動したり、まるで考えて行動しているかのように振る舞う、不思議な生き物です。あまりに小さいため、日常生活でその存在に気づくことは難しいですが、池や沼、湿った土の中など、実は私たちのすぐ近くに潜んでいます。知られざる原生生物の世界を、電子科学研究所 中垣俊之教授の研究チームが講義と観察を通して紹介しました。

「顕微鏡でみる 原生生物のふしぎな世界」(映像 2分52秒)
ミドリムシやボルボックスなどの原生生物の動きをご覧いただけます(映像には、サイエンスレクチャーでは観察していない生物も含まれます)

観察とは“なにを見たら良いか”に気づくこと

はじめに、中垣教授が「今日は研究室からいろいろな原生生物を持ってきました。ちょっと自慢しますと、こんなにたくさんの種類を一度に生で観察できる機会は『日本では今までなかった』と言いたいくらい、珍しいことなんです。本当の意味での“観察”は、その生き物の“なにを見たら良いか”に気づくこと。気づきが起こるその瞬間まで、じっくり本物と対峙してみてください。素朴な生き物の観察は生物学において非常に大事で、私の研究テーマも観察で得た気づきが原点になっています」と話しました。

電子科学研究所 中垣俊之教授。手にしているのは、参加者全員に配布したサイエンスレクチャー公式グッズのクリアファイル。紙を挟むと「科学」の文字が、外すと「探究」の文字が現れる仕組み
今回のために中垣研究室で培養した、さまざまな原生生物

キノコも酵母も 私たちの“親戚”

次に、電子科学研究所 西上幸範助教が、「原生生物の多様性」と題してレクチャーしました。原生生物は、動物や植物、菌類と同じ、細胞内に核をもつ「真核生物」です。近年、ゲノム解析技術の進歩によって、真核生物の“多様性”は原生生物が担っていることが明らかになってきました。真核生物を遺伝子レベルで進化系統別に分類すると、全部で7つほどのグループに分かれます。「多種多様なように思われる動物や陸上植物は、実際はそれぞれ1グループに収まっていて、しかもグループ内のほんの一部に過ぎません。それ以外の残りすべての部分は、なんとすべて原生生物が占めているのです」と、西上助教。

真核生物の系統樹(Genome Biol Evol, Vol.12, Issue 7, July 2020, Pages 991–992, https://doi.org/10.1093/gbe/evaa116)右下の“Obazoa”のグループにすべての動物(Animals)が、左中央の“Archaeplastida”にすべての陸上植物(Land plants)が収まっていることがわかる。残りの部分は原生生物が占めている

「例えば、キノコも酵母も動物と同じグループなので、私からすれば、シメジの味噌汁を飲むとお友達を食べているような気分になりますし、パンを見ると親戚の働きでできたものなんだなあと感じます。一方で、ほぼ同じものに思えるゾウリムシとミドリムシは、実はまったく別のグループに属しているんです」と説明しました。多様な生き物が関わり合うことでつくられる地球上の生態系は、原生生物に支えられているといっても過言ではありません。

講義する電子科学研究所 西上幸範助教

さらに、研究室で飼育しているミズヒラタムシやロクロクビムシの行動を紹介し、「原生生物はそれぞれまったく違う方法で、餌を採ったり移動したりしています。研究室から持ってきたサンプルの他に、先ほど私たちが旭川北高の校庭の池で採取してきた水の中にも面白い生き物がいると思うので、ぜひ探してみてください」と呼びかけました。

旭川北高の校庭の池から水を採取する中垣教授(左)と、北海道旭川北高等学校 磯 清志教諭(右)
採取した水を観察する中垣研究室のメンバー。左から電子科学研究所 シャルル・フォッセプレ博士研究員、生命科学院博士課程 2年 越後谷 駿さん、電子科学研究所 谷口篤史博士研究員

続いて、北海道旭川北高等学校の磯 清志 教諭が顕微鏡の操作方法を説明しました。高校生たちはシャーレから原生生物をスポイトで採り出し、プレパラートをつくって観察しました。中垣研究室のメンバーに質問をしながら、真剣に顕微鏡を覗いていました。

スポイトでサンプルを採取し、スライドグラスに乗せる
中垣教授に質問しながら顕微鏡を覗く高校生たち

さまざまな原生生物の特徴を紹介

観察の後、電子科学研究所 谷口篤史博士研究員が、さまざまな原生生物を紹介し、「ミドリムシは植物のように光合成ができるんです。一方で、動物のように、体に生えている鞭毛を使って泳いだり、体の形を変えながらぐにゃぐにゃと動く『ユーグレナ運動』をしたりもします」などと解説しました。

「原生生物の分類検索講習」と題して講義を行う、電子科学研究所 谷口篤史博士研究員

レクチャー後半では、中垣教授と西上助教が、自身の研究について解説しました。引き続き<後編>で詳しくお伝えします。

(創成研究機構 研究広報担当 菊池 優)

 

サイエンスレクチャー2022「え?身近な原生生物がこんなにも〇〇!?」

日時:2022年6月18日(土)13時00分~15時45分
会場:北海道旭川北高等学校 理科室
主催:北海道大学、読売新聞北海道支社
共催:北海道大学 電子科学研究所、文部科学省 科研費 学術変革領域研究(A) ジオラマ行動学
後援:札幌市教育委員会

※サイエンスレクチャーは、北海道大学と読売新聞社との包括連携協定のもとに開催しています。

 

【関連リンク】

サイエンスレクチャー2022「え?身近な原生生物がこんなにも〇〇!?」を開催しました<後編>