海産動物の遺伝子発現を指標にして海の汚染を診断する ~DNAマイクロアレイ技術の海洋汚染モニタリングへの応用~ Establishment of a monitoring system for marine pollution using ascidian DNAmicroarray

【流動研究部門】環境系

安住 薫 助教
創成科学研究機構

ホヤは海洋環境汚染の指標生物になれる

人類が作り出した大量の化学物質で地球の環境汚染は進んでおり、特に水環境に排出された化学物質の多くは最終的に海洋に蓄積されていきます。海洋の生態系では有害な化学物質は食物連鎖によって上位の生物に濃縮され、生殖異常、免疫低下、奇形等の深刻な問題が生じています。
私たちは、「ホヤ」という脊椎動物の祖先にあたる動物を指標動物として、海洋汚染のモニタリングのシステムを作ろうとしています。ホヤは産業国近海を含む世界各海域に多数生息しており、固着動物なので海に排出される様々な化学物質に常時さらされています。また、近年ホヤゲノムが解読されて分子的解析の基盤が確立していることも特徴です。

DNAチップを用いれば遺伝子発現の網羅的解析ができる

私たちは、ホヤ全遺伝子の85%の遺伝子を含む22,000個のオリゴDNAを1枚のスライドガラスにスポットした「ホヤDNAチップ」を世界で初めて作製しました。各種化学物質に暴露したホヤでは多数の遺伝子の発現が変動すること、さらに化合物ごとに特徴的な遺伝子発現の変動(遺伝子発現プロファイル)が生じることを見いだしています。実験により得られた遺伝子発現プロファイルと世界各海域に生息するホヤの遺伝子発現プロファイルとを比べることにより、野生のホヤがどのような化学物質に暴露しているか推定できると考えています。海の汚染状態をホヤに教えてもらおうというわけです。

北キャンパスをDNAチップ解析の拠点に!

DNAマイクロアレイヤー、マイクロアレイスキャナーなどのフル装備を備えた「北大DNAチップ解析室」を開設しました。DNAチップ解析をやってみたい先生方、院生の方々に情報の提供や技術指導をおこなっています。受託解析(共同研究)も可能です。使用するDNAチップは、ヒト、マウス、ラット、ホヤ他何でも、また、オリゴDNAチップでもcDNAチップでもOKです。興味のある方はお気軽にご連絡ください。

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