有機物のツールを使って極微サイズ金属化合物を自在に操る

【流動研究部門】環境系

小西 克明 准教授
創成科学研究機構

文明の黎明期から、人類は性質の違うものを組み合せて、便利なものをつくる工夫をしてきました。例えば、木と金属を組み合せて道具を作る、金属同士を溶かして合金を作る、といったことは、はるか昔の有史以前から行われてきたことです。このことは、科学技術が発達した今日においても、引き継がれており、より精密な形で、かつより微小な分子・原子のレベルへと進んできています。

ナノキットのアセンブル化

研究では、性質が違ういくつかの分子モジュールを「ナノキット」として用い、それらを分子レベルで精密にアセンブルして、高い機能、付加価値をもつ物質を産み出すことを目標にしています。こうしたことは、実は生物がごく自然に行っていることであり、水素結合などの弱い可逆な引力(斤力)が協同的に働いて、いくつかのコンポーネントが組織化され、クリーンな物質変換機能や生理活性の調節が行われています。これをお手本に、「弱い分子間力」を人間の手で操って、複数モジュールの複合体(「超分子複合体」)を自在に作ることができれば、生体も超越する機能が実現できるかもしれません。最近の科学の進歩で、これが決して夢物語ではないレベルまで到達しています。

「ナノの金属」を「有機物」と組み合せる

ここでは、ナノオーダーの「金属」に着目します。金属といえば、無限個の金属からなる固まりや、数個の金属原子を含む錯体が思い浮かべますが、最近、それらの中間のナノサイズをもつ金属化合物(クラスター)が、特別な性質を示すことがわかってきました。本研究では、こうしたクラスター類と有機化合物を「分子キット」として用い、電子的、構造的に全く異なる性質をもつ両者を、上述の弱い分子間力の戦略的利用によって精密にアセンブル化します。すなわち、クラスターの近傍に有機物からできたミクロ環境を構築し、「有機物側のデザイン」によって、その性質をチューニングするための新しい方法論を確立し、それを基盤に次世代の環境調和型触媒やエネルギー変換材料へと展開することをめざします。

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