根と微生物と土が生み出す根圏の解明
100ナノメートルの秘境〜根の周りの世界〜
信濃卓郎(しなのたくろう)
創成研究機構 研究部・流動研究部門 未踏系
(在籍期間 平成14年12月〜平成20年3月)
■現在■ 農業・食品産業技術総合研究機構 根圏域研究チーム チーム長
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いらっしゃいませ。
コーヒーブラックでよろしく。
信濃さんはよく日焼けしてらっしゃいますね。
僕の研究は野外での作業が多いんですよ。
どんな研究なのですか?
「根圏」っていうことば聞いたことありますか?植物の根にごく近い周辺ことを指しているのですが、ここで、植物はすごいことをやっているんです。僕はこの「根圏」の研究をしています。
植物の根って土から水分と養分を吸収しているところですよね。
そうです。その吸収の仕方はヒトで言うところのおなかの腸とよく似ています。植物の根には細かい毛が生えていて、根毛と呼ばれ、それが腸の絨毛(じゅうもう)の役割とよく似ているんです。
ヒトにとって、口から肛門までは、食べ物という外界に接している面です。そこに私たちは毎日食べ物を通して水分と栄養を吸収しています。根も同様で、養分を吸収するため外界に接していて、根毛を生やして、絨毛のように水分や養分をよりたくさん吸収するために表面積を格段に増やしています。
なるほど、根はヒトでいう消化器というわけなのですね。では、養分の吸収のしくみはどうなっているのですか?
腸内細菌が栄養の吸収を助けているように、根圏の周りにも微生物がいて、養分の吸収を助けているのです。
では、その微生物が根の周りにいない植物は養分の吸収ができないのですか?
いいえ、植物は微生物が存在しなくても生きていくことはできます。ただし、土壌という様々な無機物や有機物から構成されている環境で生育していく時に、微生物が持つ多様な機能が役に立っているのです。微生物は物質の分解や代謝をしながら植物の養分獲得を助けています。そのために植物は根から微生物が好む化合物を分泌して、根の周りに引き寄せてくることも知られています。
例えば根粒菌という微生物を引き寄せるのに、植物の根はフラボノイドという化合物を分泌します。それに引き寄せられた根粒菌は根の中に住み着き酵素を出し、周りの窒素ガスを植物にとって必要なアンモニアという養分に換えています。
すごいですね。植物が微生物を引き寄せてきてしまうなんて。
実はこのような役割がわかっている微生物はごく一部で、根圏の周りには6000種類もの微生物がいるらしいのですが、培養することが難しいため研究はまだまだこれからなのです。さらに根が出している分泌物も200種類くらいあるだろうと考えられていて、それぞれがどんな役目を果たしているのかまだまだ未知なる世界です。

この研究が進むことで農作物の育て方が変わるかもしれませんね。
はい、それを期待しています。土壌のこと、植物のこと、微生物のことを調べていけば、肥料や農薬を軽減することができ、環境と生き物にやさしい農業に貢献できると信じています。
「根」強く、がんばってください。