電子部品の材料が未来を変える
分子が集まってできる微小な結晶に眠る次世代ハイテク電子部品の可能性
〜ナノデバイスの“光合成”を目指して〜
内藤俊雄(ないとうとしお)
創成研究機構 研究部・流動研究部門 ナノテクノロジー・材料系
(在籍期間 平成14年12月〜平成20年3月)
大学院理学研究科 准教授
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こんにちは、お飲み物は何がよろしいですか?
では、ミルクティください。
内藤さんは何を研究されているのですか?
電子部品に使える新しい材料を作ろうとしています。コンピューターや携帯、テレビの急速な機能向上を支えてきたのは、電子部品の性能によるものです。しかし、今使われているシリコンなどの無機材料では、これ以上電子部品を改良するのは限界だろうと思われています。それは、現在の改良法・高性能化が、こうした材料を如何に小さく加工できるかに掛かっている一方で、もうこれ以上小さく加工するのは難しいという段階に差し掛かっているからです。ならば、電子部品の材料自体を開発してみようと思ったのです。
どのような材料を考えていらっしゃるのですか?
「分子性材料」と呼んでいるものです。これまでの電子部品に使われてきたシリコンなど無機材料は主に天然に産するのに対し、分子レベルで天然にはない物質を自由に設計・合成できるのが特徴です。私が扱っている分子はおおよそナノメートルのサイズです。仮にこの分子を1mmとすると、人間の大きさは日本列島ぐらいになります。これまでの無機材料に比べて、はるかに小さい電子部品をつくることができる可能性があります。
さらに、柔らかくて、省エネで、しかも安価なものが実現できれば、これまでの電子機器類を一変させることができます。どんな製品に使われても省エネが期待できるということは、これからのエネルギー問題にも朗報なのです。
どのように変わるのでしょうか?
例えば携帯電話やモバイルパソコンに搭載されれば、バッテリーを小さくすることができ、より軽くすることができます。ディスプレイも紙ぐらい薄いシート状にすることができたり、持って歩くのではなく、身にまとうといったコンピューターも実現できる日が来るかもしれません。
電子部品に使える分子性材料はどのようにつくるのですか?
特定の分子が整然と並ぶ結晶をつくります。必要な試料を合成して、さまざまな工程を経て結晶化させるのです。
30年ほど前までは、分子性材料では電気を通さない「絶縁体」しかつくることができませんでした。ですが、その後次々と改良が重ねられ、金属並みに電気を通す「伝導体」をつくれるようになりました。さらに金属では真似のできないような優れものもつくれることがわかってきました。例えば、磁場や温度、圧力に敏感に応答して伝導性が変わるとか、自分で勝手に電気回路のような形を作ってくれるとか。
私の研究では有機物と銀とを混ぜて反応させ、そうして出来た分子性材料に光を照射するというのがみそです。これによって伝導性を変えることができるのです。
←試料から分子性材料(中の黒く見える物質)を作っているところ。試料の分量を少しずつ換えながら実験を何度も繰り返し、電子部品に有効な材料を探しています。
実用化はまもなくですか?
いや、あと5年かかるか、10年かかるか、いずれにせよまだまだ先のことです。実用化への最初の壁は、劣化の問題です。ナノメートル未満の薄皮の部分でさえも電気伝導性を左右する部品なので、表面が空気に触れた途端に酸化する、いわゆる錆びてしまうと安定に機能しなくなります。この劣化を防ぐ技術が必要なのです。錆びる前に、何かで表面を覆ってしまうなどの工夫が考えられます。
その他に、工業的に可能な大量生産の方法も考えなければならず、実用化への課題はまだまだあります。しかし、実用化されれば、いわば21世紀の産業革命を引き起こせる可能性があります。そんな夢を見ながら、画期的な分子性材料を日夜探しているのです。
楽しみにしています。ありがとうございました。