科学技術と社会のよりよい関係とは
技術・リスク・文化価値の現象学
石原孝二(いしはらこうじ)
創成研究機構 研究部・流動研究部門 広域文化系
(在籍期間 平成17年4月〜平成20年3月)
■現在■ 東京大学大学院総合文化研究科 科学史・科学哲学研究室 准教授
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こんにちは お久しぶりです。
えっと、コーヒーください。
石原さんの最近の研究テーマについて教えてくださいますか?
一言で言うのは難しいのですが、科学技術倫理という言葉がキーワードになるでしょうか。
それは、生命倫理や環境倫理とは違うのですか?
これまでは、生命倫理とか環境倫理のように、特定の領域に対して科学技術がもたらす倫理的問題が個別に扱われてきましたが、その中には、科学技術一般がもたらす共通の倫理的問題が含まれています。科学技術倫理学は、そのような共通の倫理的問題を構造化することを目指しています。
難しそうですが、なぜそのような学問が必要になってきたのでしょうか。
生命倫理や環境倫理は技術の後追いをしてきたという側面があると思います。原子力発電所、脳死、BSE、クローン、遺伝子組み換え食品などは社会問題化してから後追いする形になっています。そのような経験から現在は、問題が起きてから考えるのではなく、技術が実際に社会に出て行く前に、それぞれの科学技術の倫理的問題を考えようという意識が高まってきました。またそれぞれバラバラな考え方ではなく、科学技術一般に共通な科学技術倫理学が必要とされています。
科学技術のあり方そのものを考えるという研究なのですね。具体的にはどのようなことを研究されているのでしょうか?
科学技術倫理には大きく分けて、三つのレベルがあると言えます。一つ目は、科学技術と社会との関係を扱う「マクロレベル」、二つ目は、科学技術に関係する組織(学会や大学、研究機関、企業など)のあり方を扱う「メゾレベル」(中間レベル)、三つ目は、研究者や技術者個人の倫理を扱う「ミクロレベル」です。
マクロレベルでは科学技術の推進や規制のあり方をどうするべきかなどについて考えます。メゾレベルでは、学会や大学の組織管理のあり方や倫理綱領などを研究対象としています。ミクロレベルでは、研究者や技術者の倫理教育をどのように行うのかが問題となってきます。私がやろうと思っているのは、この三つのレベルを統一的に扱えるような枠組みを作ることで、そのために、科学技術哲学、倫理学、リスク研究、コミュニケーション理論などの成果を取り入れていくことを考えています。
そういえば最近、「研究倫理」が問題になっていますが、今のお話だと、研究倫理はミクロレベルの問題ということになるのでしょうか?
データ捏造や研究資金の不正使用という問題は、個人の不正行為によって起こるわけですから、ミクロレベルの問題だと言えます。ただし、そうした不正行為の背景には、研究現場の慣習や研究機関の管理体制、さらには、国による研究開発投資のあり方や科学研究の世界的な流れなどがあります。倫理の問題は、三つのレベルが密接に絡み合ってきますので、その意味でも三つのレベルを統一的に扱う科学技術倫理学が必要なのだと思います。
なお、「倫理」というと「これをしてはいけないとか、あれはダメだとか」といったネガティブなイメージを持たれる場合がありますが、必ずしもネガティブな面ばかりではありません。科学技術と社会とのよりよい関係のあり方を考えていくことも、科学技術倫理学の役割の一つだと思っています。
なるほど、科学技術倫理学の重要性がわかりました。ありがとうございました。