【流動研究部門】佐藤 敏文 准教授

佐藤 敏文 ナノテクノロジー・材料系
植物由来の原料を利用した新しい医療用ゲル材料の開発
~より安全な外科用接着剤、止血剤を目指して~
Development of medical gel-materials derived from carbohydrate polymers
佐藤 敏文准教授

元) 創成科学研究機構・流動研究部門 ナノテクノロジー・材料系

 現在、外科用接着剤、止血剤として用いられている医療用ゲル材料のほとんどは、人の血漿蛋白質や、牛や豚の骨や皮といった生体材料(フィブリノゲン・ゼラチン・コラーゲンなど)を原料にして製造されているが、それらからのウイルス性肝炎、発熱性物質、アレルギー、BSE等の感染に対する懸念から、厚生労働省は他の材料に置換る方針を打ち出し、指導と規制を行なっている。

しかしながら、現状においてこれらに変わる材料はほとんどない。人・動物由来原料を用いない外科用接着剤、止血剤として実用化されているのは、シアノアクリレート(アロンアルファA)のみであるが、その性能や毒性に基づく制約から適用はごく限られたものにとどまっている。そのため、人・動物由来原料を用いず製造可能な汎用の医療用ゲル材料が必要不可欠な状況となっている。

そこで本研究では、これら人・動物関係医療品の代替品として植物由来の原料から作られた特殊な構造を持つ糖鎖(糖が多数つながった分子)に注目し、この糖鎖を用いた新しい医療用ゲル材料の実用化を目指す(図1参照)。

使用する糖鎖はお菓子等に使用されている糖や廃糖質と呼ばれる廃木材、廃糖などから作ることが出来る。北海道は土地柄、廃糖質が多く、この処理が問題となっているが、この廃糖質を高度利用することにより北海道の地場産業の振興と発展の一助になると考えられる。得られた糖鎖は医用材料として下記のような優れた素質を持っている。

  1. 入手が容易な物質から実用的なコストで再現性よく合成できる基盤材料である。
  2. 原料や生成方法の選択によって物理的、化学的性質を広く制御できる。
  3. 分解後の生成物の生物学的安全性面からも、問題を起こさないような糖が原料となっている。

この糖鎖は架橋剤を用いたゲル化や生体適合性材料などによる化学修飾により新規な機能性ゲル材料となることから(図2参照)、外科用接着剤、止血剤、創傷被服材、人工臓器用の癒着防止膜などに応用でき、医療、医薬分野への波及が考えられる。

 

研究開発成果が実用化した場合の効果

  1. 感染の危険性をはらむ人・動物由来の材料を使用せずに既存の汎用医療材料、用具を製造する選択肢ができることによって、医療の安全向上に貢献する。
  2. 廃糖質の高度利用により、ゴミ問題の軽減と産業の振興と発展に寄与する。
  3. BSEやC型肝炎等の問題解決は、世界的に普遍的課題であるので、海外の開発状況を勘案した場合に、国内はもとより広く諸外国で利用される可能性が高い。