【特定研究部門】近赤外域を活用し、高効率に光電変換が可能な新たな太陽電池の開発を目指す

エネルギーの低いフォトンを有効利用する新しい太陽電池の開発を目指す
光アンテナ搭載高効率光電変換システム研究拠点の整備構想
三澤 弘明 教授

北海道大学 電子科学研究所

見えない光、赤外線を利用する太陽電池

キーワード:赤外線、太陽電池、光電変換、金ナノ構造、プラズモン、酸化チタン

地表に到達する太陽光には、紫外線、可視光線、赤外線と呼ばれる波長の異なる、すなわちエネルギーが異なる様々な光が含まれています。図1は地表で観測される太陽光エネルギーの分布を示していますが、そのうち40%以上は、波長が800 nm以上の赤外線によって占められています。しかし、現在、太陽電池として広く用いられている多結晶シリコン太陽電池でも、波長1000 nm以上の赤外線を光電変換することは原理的に困難であり、現在のところ赤外光を有効に電気エネルギーに変換できる太陽電池はほとんど存在しません。より高い光電変換効率を有する太陽電池を実現するためには、図1に示す太陽光の幅広いスペクトルに応答する太陽電池を開発することが必要不可欠です。とりわけこれまで利用する術が無かった赤外線を確実に電気エネルギーに変換できる革新的光電変換技術の研究開発が極めて重要となります。 最近、我々は、酸化チタン(TiO2)と呼ばれる半導体の単結晶基板上に半導体微細加工技術を用いてナノメートルサイズの金のロッド構造(110×240×40 nm3)を精緻に配列させた電極を作り(図2(a))、それに可視光や赤外光を照射して発生する光電流を観測しました(対極:白金線、参照極:SCE、支持電解質:0.1 mol/dm3 KCIまたはKCIO4)。金ナノロッドの中に存在する自由電子は、照射されたある波長の光の波によって揺すぶられ周期的な運動をする局在プラズモン共鳴という状態を形成します。局在プラズモン共鳴を示す波長は、作製した金の形状や、サイズなどに依存しますが、この共鳴によって金の電子をエネルギーの高い状態にすることができ、結果として図2(b)に示す450~1300 nmの極めて広い波長範囲の光を電気エネルギーに変換可能なことを見出しました。この光電変換系の特筆すべき特徴は、金ナノロッド/酸化チタン/支持電解質水溶液という極めてシンプルな系を用いて、金ナノロッドのプラズモン共鳴バンド1050 nm付近の近赤外光により変換効率8.4%、および650 nm付近の可視光により変換効率6.2%の光電変換を実現したことであり、また、200時間以上にわたり安定した光電流を観測した点にあります。今後、金ナノ構造の設計を最適化し、より大きな光電変換効率を有する太陽電池の開発を目指します。